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どのような位置づけにするのか

情報発信の位置づけというのも漠然としますが、多くの企業では、情報発信は営業活動や販売の付帯事項的に扱われています。広告宣伝のような明確なカタチになったものは認識されますが、広報というような漠然とした情報発信活動は、専門部署がないだけでなく、どこが担うのかもはっきりしていない場合が多いのではないでしょうか。

そのため、例えば取材が入ったりして、いざ発信する機会があったとしても、広報用の資料が用意されていない、写真がどこになるかも分からない、誰が説明するのかも決まっていないなどで、ちゃんと情報発信ができなかったりします。

もちろんよほどの大手企業でない限り専門部署を設けるなどは、コスト的に難しいですが、どこが何を担うかという情報発信のフォーメーションを社内で決めて、資料の管理や作成はどこが担うのかということを決めておくとスムーズに対応できます。逆にそれらを決めることで積極的に情報発信していこうと言う体制ができ、「情報発信する」という活動の位置づけも明確になります。

こういうことは実は非常に大切ですが、ちゃんと検討されることなく、毎回なんとなく誰かが対応しているという企業も多いのではないかと思います。そういうケースでは、過去の取材や掲載、あるいは広告などが必要になったとき「あれは、誰がやってたんだっけ?」となり、外部からは「自社の情報もちゃんと管理できていないのか」と思われてしまいます。

 

誰に向けて発信するのか

情報によって発信する対象は変わってきます。ターゲットを絞るときもあれば、広くする場合もあります。重要なのは、それを意識的にやるということです。

人が何かを話すとき、必ず相手がいて、その人に伝わるように話します。企業の情報も同じです。相手によって伝え方や表現も違ってきます。「誰に」というのは、まず決めなければならないことです。

 

何を発信するのか

何をと言うのは、商品情報なのか企業情報なのかという情報の種類もありますが、それは前提としてあるのでここでいう「何」は、コンセプト(伝えるべき情報の本質)です。商品の安全性なのか、性能なのか、顧客におけるメリットなのか・・・・。何が伝わらなければいけないのかという目的のようなものです。

そこを明確にしておかないと余計な情報があったり足りなかったりするだけでなく、情報自体にストーリー性が希薄になり、説得力がなくなります。

ありがちなのが、とりあえず訴求ポイントのようなものが羅列されたような内容です。“とりあえず”の資料なので、情報を寄せ集めただけで終わってしまい、伝えなければいけない情報が詰められていないために、どうでもいいような情報も一緒に発信されてしまいます。人間は、一度にたくさんの情報を受け取っても覚えていません。5つのポイントを聞くより、1つのポイントを聞く方が圧倒的に覚えています。5つのポイントの場合、1つも覚えていないということにもなりがちです。「何を伝えなかればいけないのか」を決めないのは、発信活動をムダな労力にしてしまっている可能性大です。

 

どう受け取って欲しいのか

前項と表裏一体なのが「どう受け取って欲しいのか」です。ここが抜けている場合も多いのではないでしょうか。情報を発信する場合何らか受け取って欲しいイメージ(期待効果)を持って発信するはずです。そこを明確に意識するということです。

逆に考えると「受け取って欲しいイメージ」から逆算して「何をどのように発信するのか」が決まるとも言えます。この「受け取って欲しいイメージ」は、「好感を持って欲しい」というような曖昧なものでは意味がありません。もっと具体的に、○○の分野では信頼できる上位企業なのだとか、顧客のフォローについてとても細やかな配慮のある企業だとか、できるだけ望むディティールを明確にする必要があります。子細であるほど、「何を〃発信するのか」も具体的になります。そうすることで分かりやすさや説得力、印象などメッセージ全体が強化されます。

 

そのために何がポイントとなるのか

こういった情報の決め事の背景として必要なのが「方針」です。方針というのは、どういった情報を発信する、どのような手法で発信する、どこまで発信する、万一トラブルになったらどう対処する等々、情報発信の行動規範となる方針です。さらにその背景には、企業としての理念が必要です。企業活動のすべての規範は、企業の理念が起点になるからです。

といっても、企業理念自体が明確でないという企業も、実は多いのではないでしょうか。ここで言う理念は、有り体の言葉が並べられた形だけの理念ではなく、本当の意味の理念です。

かつてCIが流行ったときにさかんに「企業理念作り」的な事が実施されましたが、むりやりひねり出した理念をカタチにしただけのものも多かったように思います。そういうケースでは、ことごとく機能せず、社員さんもなんだか面倒なことが増えただけ。あるいはマークが少し格好良くなったくらいだったのではないでしょうか。情報発信の場合は、目に見えない内容を決めなければ成らないので、カタチだけの理念では困ります。

うちはとくに変え割った商売をやっているわけでもないので、理念などないよ。といわれる会社もありますが、どんな企業にも顧客を思う気持ちがあります。そこには、無意識にでも必ず理念が宿っているのです。まったく同じような事業でも経営者が違えば思いは少し違ってきます。顧客のために商品を作って届けてと言う活動を行っていれば、無意識に理念があるはずなのです。

もし、そう言うものがないと、とっくに顧客からの信用をなくし、事業ができなくなっているはずです。

理念が明確でないと感じられる企業は、今一度事業への思いや創業時の思いなどを点検してみてはいかがでしょうか。