企業にとってのWEBは、業種がどうあれ、ネット上のお店のようなものです。お客さまと直接接する場所です。つまり接客がとても大事です。適切に接客できるような構造や仕組みそして作法が必要です。いくらアクセスを集めても接客が良くなければ、効果がないか逆効果にさえなります。しかし、接客は一様ではなく、商品や業態などにより企業ごとに異なります。適切に接客できるWEBを一緒に考えてみませんか。

目次

本当の意味でのWEBでの接客とは。

「WEB接客」という言葉が数年前からWEBのマーケティング用語となっています。
「接客」を自動化する「WEB接客ツール」も多数登場し、さかんに導入を薦めます。 接客を自動化できるツールは便利ではありますが、注意が必要です。

自動化ツールは、あくまで効率良く接客しようという売る側の欲求を満たすものです。つまり、お客さまにとっての都合より、売る側の都合を優先させているということです。それはお客さまにとって必ずしも都合が悪いわけではありませんが、中には弊害もでてくるということです。

WEBに限らず自動化ツールというものは、効率を追求するがために往々にして受け手の都合を無視してサービスを展開しがちです。場面によってはWEB接客というおもてなしのためのツールがかえって分かりにくくしたりということも生じてきます。

本当の接客は、お客さまの行動や様子をうかがいながら、適切にアプローチ&サポートするものです。これは、実店舗でも難しいテーマです。ましてや様子の見えないWEBで、ツールによって行うのは、より難しいことだということです。
しかしながら、今後はAIの発達によりWEBならではの接客手法も生まれてくるかも知れません。

WEBでの接客の基本は、まず分かりやすいサイトを作ることです。そのためには、載せる情報の整理体系化も必要ですし、表現や表示の体系化も必要です。
必要な情報が、分かりやすいところにあるかどうか、必要な操作が分かりやすくなっているかどうか、こういうWEBとしての基本中の基本がすなわち接客でもあるわけです。そこをおろそかにして「接客ツール」を導入しても効果は薄いかも知れません。

見やすさ

 ■好印象

どんな場合でも第一印象というのはとても重要です。理屈ではなく、最初にサイトを訪れたときに、「あ、見やすそうだな」と感じるか「なんか、面倒くさそう」と感じるかでは、その後のお客さまの心理行動に大きな違うが生まれます。この第一印象は、心理学で「初頭効果」といわれ、心理学者ソロモン・アッシュの実験で証明された心理効果で人間は「自然に最初の情報が重要だと考えてしまう」のです。つまり、トップページで一度決まってしまった第一印象は簡単には覆せないということです。

■文章の仕様、レイアウト

WEBの場合は、見る人のパソコンやブラウザの設定で文字サイズは違ってきますが、多くの人は初期設定のまま見ています。それを規準とした文字サイズ、行間、フォントを考えることが重要です。読みやすいと「感じる」かどうかで、サイトへの好感度は違ってきますし、内容の伝わりやすさも変わります。読みにくいと途中で面倒になって閲覧をやめてしまいます。
この「読みやすさ」は、必ずしもデザインの良し悪しとは連動しないことにも考慮すべきです。「良いデザイン」という定義も難しいですが、俗にお洒落なデザインと言われているものには「読みにくさ」が同居している場合も少なくありません。

■色

人間の視覚情報の中で色が占める割合は多大です。始めてものを見たとき、まず色が飛び込んできます。サイトをどのような色、トーンで構成するのかは、基本的な問題です。ただ、パソコンやスマートフォンなど、見る機器によってトーンは微妙に変わってくることも考慮すべき点です。

■デザイン

デザインの良し悪しの基準というものは、難しいものですが、コミュニケーションの手段としては、まず分かりやすいことが必要です。その次に美しさや品格、あるいは力強さなど感性に働きかける要素の考慮が必要になってきます。
一般的にデザインというと「お洒落」だとか「カッコイイ」とかというイメージに捉えられがちですが、それらはあくまで見やすいことが前提です。また、ブランドなど「イメージ」を大切にしたい場合は、デザインのテイストやトーンの統一性、あるいは抽象的ですが「美意識」なども重要になってきます。

分かりやすさ

コミュニケーションツールにおいて「分かりやすさ」は何事にも置いて重要です。分かりにくいツールでは意味がありません。「分かりやすい」は、漠然と考えるのではなく、体系的に考えることで、精度が高まります。

統一感

全体の統一感は、意外と重要な要素です。部分部分をみると分かりやすくても、その様式やルールが、ばらついていると全体としての理解がしづらく、見る人の心の中に入りにくくなります。逆に全体の仕様やルールが統一された中で説明表現されたものは、理解しやすく、心の中にもすっと入ってきます。

■印象

好印象の項目と内容が被りますが、第一印象での「分かりやすいかどうか」という印象の良し悪しは、閲覧者の意欲に影響します。閲覧者の姿勢が積極的か否かで、理解は大きく違って来ます。特にトップページの印象は重要です。

らしさ

例外を除いて、商品や業態には、それらしさが伴います。何らかの目的を持ってサイトを訪れたときに、漂うそれらしさは、安心感と期待感を醸し出します。逆に期待した「らしさ」とは異なる場合、混乱し、見るをやめてしまう場合もあります。俗に離脱3秒(分かりにくいと3秒で見るのをやめる)と言われるのは、この要因が大きいのではないでしょうか。

■文章構成

WEBというのは基本的に読むことが多いツールなので文章はとても重要です。その割りには、ちゃんと考慮されていないサイトもとても多くあります。会社のスタッフが書ける場面と、専門家が書かなければ行けない場面がちゃんと認識されていないように思います。戦略的に書かなければいけない文章は、多くの場合専門家でなければ難しいと思います。
商品説明等でもスタッフが書かれたのか、理解しにくい文章が掲載されている場合があります。文章というものは、良し悪しを問わなければだれにも書けるため、良し悪しが認識されにくいものです。しかし、ちょっとした言葉遣いや言い回しなどで、伝わりやすさや印象は変わります。
日常会話でも相手の話し方言葉遣いなどで、自分の感じ方や分かりやすさが違う場合があると思いますがそれと同じです。

■用語

用語について配慮されていないサイトも意外と多くあります。通じにくい専門用語や業界だけの言い方を使ってる場合、読む側には疎外感が生まれます。自分には配慮されていない、客として見られていないと感じます。それだけで読む意欲をなくしたり、極端な場合、嫌悪感さえ生まれます。閲覧者を想定し、分かる言葉や表現で説明することはとても重要です。

■操作しやすさ

インターネットはリンクが重要な機能です。デザインとも関係することですが、リンクやボタンが操作しやすいかどうかは、基本的に重要な問題です。家電製品の操作ボタンと同じくらい重要です。

指示

いろいろな場面でこうしてください、ああしてください、こうなりますという指示を補足する場合がありますが、これも接客としては重要です。ひとこと添えてあるかどうかで、印象やその後の閲覧の快適さは大きく違って来ます。お店で言えば、違う売り場に行きたいときに、店員がひとこと分かりやすい目印を補足してくれるとかそういう細かい配慮です。しかし、これは度が過ぎると返って分かりにくくなるので注意が必要です。

■インターフェース

話が逆かも知れませんが以上のようなことを総合的にまとめるのがインターフェースという考え方です。これは、サイト全体として考えないといけません。サイトのおよその構成が決まったら、まずインターフェースをどのようにするかを考えるというような手順です。

画面の移り変わり

WEBではリンクにより画面が変わります。これも重要な配慮ポイントで、うまく考えないとページの多いサイトでは、閲覧者がどこにいるのか、どう来たのか、どう行けば良いのかが分かりにくくなります。

■人間心理

画面遷移では、とくに人間心理を考える必要があります。画面が変わった際にどう見えるか、どう感じるか、どう受け取られるかが重要です。こちらが思っていることと、実際に受け取られることは、必ずしも一致しません。

■期待想像

おそらくランディングページ(広告などのリンクから最初に開くページ)の説明などでもあちこちで書かれていると思いますが、人間は、アクションを起こすときに、「こうなるだろう」と想像し期待します。それとの乖離が混乱を引き起こします。閲覧者の心情を考慮し、期待に添って表現し、そして、その期待以上のものを提供することで、好感が生まれます。

サイトの仕組み

そもそものサイトの仕組みから考慮すべき問題もあります。

■構造

最近は、様々な機能が生まれてきて、サイトの構造自体がいちようではなくなってきています。サイトの幅や長さの考え方、トップ画面に他ページをビジュアルとして組み合わせるなど、見え方がかなり違ってきます。それらは、特性に合った使い方をしないと分かりにくくなったりして逆効果になります。また、閲覧者をどう捉えるか(一般、業界人、一見さん、リピーターなどなど)によっても違ってきます。そもそもそのサイトにどういう構造を持たせるかは、初期段階で充分に検討されるべき問題です。

■リンク

WEBで最も便利な機能はリンクです。情報のつながりはリンクで構成されます。しかし、不用意なリンクは混乱を招き返って情報性を低下させてしまいます。リンクの使い方をある程度絞って、画面遷移を制限するのも見やすさのためには考慮すべき問題です。

■デザインテイスト

デザインテイストも全体的な問題です。印象と同じような効果です。商品や業態など、特にブランド性を重視するならデザインテイストの管理はとても重要な問題です。

マーケティングストーリー(ウェブの役割)

マーケティングの中でWEBがどのように位置づけられているかでもWEB接客は影響を受けます。リアルな営業や流通、販売状況とWEBの関係をきっちりと構築しなければ、WEBでの接客も曖昧になって来ます。まずは、マーケティングストーリーの点検から始めましょう。

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WEB接客と言っても、ツールを導入すればできるというものではなく、むしろその前段階が大事だと思います。しかし、それは特殊なことではなくて、大昔から商売の基本とされていることをWEBに置き換えるだけの話です。それを徹底させることがなかなか難しいということだと思います。

こういった接客は、自社の商売を良く分かっている経営者こそが一番良く分かるものです。経営者の皆さま、接客品質の高いWEBサイトをお考えください。