マーケットを先に見るという発想。

新規事業を始める場合、誰しも自社の強みを生かして何かできないかと考える傾向があります。
そのとき注意しなければいけないのは、知恵を絞りすぎて、ありもしない幻想マーケットを想定することです。それは”自社を基準に”、消費社会をムリヤリ合わせようとするするからです。もちろん、それは試験販売やそれ以前の試し売りなどで検証できるため、致命的な失敗は防ぐことができますが、その発想では事業に限界が来ます。

成長経済の時代には、それでもどんどん新しいマーケットを生むことができたはずですが、成長が鈍化し、多様化し、消費が成熟した現代では、その発想ではほとんど新しいマーケットをつくれなくなっています。アップルのような、人が考えてもみないことを具現化してヒットさせるのは、かなりの高等テクニックです。それができれば最強なのですが、半ば天才的とも言えるワザです。誰もができることではありません。
しかし、一度発想を逆にして、先にマーケットを探してみることで、新規事業の糸口が見つかったりします。いちばん探しやすいマーケットが「誰かが何かに困っている」ことです。困っていない人に何かを売ろうとしても難しい。しかし、何かに困っている人たちに、その困り事を解消できる商品やサービスを彼らが買える形で提供することができたら、売れない理由がありません。
その提供すべき商品やサービスが、自社のノウハウと適合すれば理想的ですが、適合しなくても、あるいは自社の現業とかけ離れていても、何らかの方法で自社で提供できるなら事業としてなりたちます。

つまり自社の強みを探して提供するのではなく、潜在するマーケットを探して、提供すべき商品を用意するという考え方です。マーケティング用語では、マーケットインと呼ばれる考え方ですが、この考え方の良い点は、マーケットに制限がない点です。自社を中心に考えるとマーケットが制限されてきますが、マーケットを先に考えると制限がありません。つまり、ある意味無限に事業が作れていくということです。
もちろん新しい事業がそんなに簡単にできるわけではありませんが、少なくとも発想に制限がありません。つまりこの発想で事業ができるようになると、可能性は無限に広がるということです。そのためには、自社の業態や商習慣などに縛られないことが重要です。
既成観念にとらわれず柔軟に考え対処できることができなければ、新しいマーケットを見つけても自社に取り込むことができないと言うことです。ましてや、それが自社の現業とかけはなれたものである場合はハードルが高くなるかも知れません。
しかし、「生き残れる者は、強い者ではなく、状況に合わせて変化(進化)できる者だけだ」と言われるように、現代のマーケットは、マーケットインの発想なくしては生き残れない状況にあります。マーケット発想は、生き残りの必要不可欠なノウハウとも言えます。
とはいえ、プロダクトアウトも潜在的なマーケットがあるからこそヒットするわけです、iPhoneのように。

適正価格とは。

よくテレビにも出られていたディスカウントショップの社長(故人)が、まだユニクロが台頭する前にこんなことを言っていました。
「うちのジーンズ、中国から輸入してて390円で売っても利益でるんやけど、それでは売れんのよ。1300円にしたら売れるんや」。
390円だと、そんなに安くて商品は大丈夫か?という心理になって買わない(ユニクロ以前のジーンズ相場は5000円)が、1300円だとディカウントショップならあり得ると思い、お得なジーンズとなるというわけですね。
商品の価格は安ければ売れるというものではないということです。海外の超富裕層を相手に個人トレーナーをしている人も、30分5万円でもいいのだが、それでは彼らは納得しない。30分30万円でないとダメなのだと言っていました。
同じようにそういった富裕層を相手に旅のコーディネートをしている人も、1食2万円の食事を選ぶと「大丈夫なのか?」と言われるそうです。彼らにとっては、5万円くらいが普通なので2万円の食事では中身が不安だというのです。
商品価格の正しいつけかたは「それを買ってくれる最高の価格」です。たとえ、10円で仕入れたモノでも相手にとって1万円の価値があれば買うわけです。商品単体では無理も売り先を変えたり、価値を高める工夫をすれば、大きな利益を生むことができるということですね。
とかく仕入れ値に何十%の利益をのせて価格を決めるという風に考えがちですが、お客さんがいくらで買うだろうという想定から価格を決めるとまた違う売り方を発見できるかも知れません。

「嫌い」を「好き」に変える品質。

人の好みは変化すると言う話です。特に趣味性が低いものごとの場合「品質」の高さが好みを支配します。
私自身こんな経験があります。 かつて、ブルーベリージャムはあまり好きではなかったのです。 それはA社の商品しか知らなかったからです。 あるとき各段に美味しいブルーベリージャムを頂き 「ブルーベリージャムは、こんなにうまいものだったのか」と ブルーベリージャムに対する印象が変わりました。
それからはA社の商品までもが、おいしく感じられるようになりました。 「品質」によって、そのアイテム自体の印象も変えられたということだと思います。 こういう体験は、誰しもあるのではないでしょうか。 野菜嫌いだった子供が、おいしい野菜料理を食べたことをきっかけに、 普段でも食べられるようになったとか。 つまり「好きではない」という人も、「好き」に変わる可能性があって、そのきっかけは、「品質」の体験だったりするということです。